筋肉は関節を動かすために必ず両端はきしぶ起始部とていしぶ停止部と言われ骨に付着しています、このような筋肉の付着部の骨が自分の筋肉収縮時に剥がれ折れることを裂離骨折と言います。骨盤は下肢の筋肉の起始部となっているため、裂離骨折の好発部位となっておりそのほとんどはスポーツ活動での自家筋肉の牽引力によって起きています。とくに発育期の起始部周囲はこったんぶ骨端部と呼ばれ軟骨でできていて周囲の骨より強度が弱いため、裂離骨折は12〜17歳に頻発し決して珍しいものではありません。
 骨盤で裂離骨折が発生する部位はちょうこつりょう腸骨稜、じょうぜんちょうこつきょく上前腸骨棘、かぜんちょうこつきょく下前腸骨棘、ざこつけっせつ坐骨結節と四カ所あり、そのおのおのにはスポーツ重要な下肢や体幹の筋肉の付着部があります(図1)。

(図1)骨盤に発生する裂離骨折部位と関係する筋肉

 

発生機転と症状
 それぞれの部位に共通する発生機転は、筋肉が非常に強い収縮を短時間に要求される時に発生することです。ダッシュの瞬間やダッシュ中、ボールをキックした瞬間などに骨盤や股関節周囲に激痛に襲われた時には裂離骨折を疑う必要があります。時には、しばらくすると痛みながらも歩行や走ることも可能になることもあり、「肉離れ」だろうと放置される場合もあります。しかし、スピード系のトレーニングやスポーツ時の痛みが改善せず、同様の動作時再度激痛が出現してやっと病院を受診する事もあります。

 

腸骨稜裂離骨折 ちょうこつりょう
 この部位には外腹斜筋などの体幹部の筋肉が付着しており、バレーボールのアタックやフィギアスケートなどの急激な体のねじり動作により発生します。完全復帰には、6〜8週間かかります。

 

上前腸骨棘裂離骨折 じょうぜんちょうこつきょく
 最も多い種目は陸上競技でついで野球、サッカーで、スポーツ動作としては疾走中に発生することが多い。多くは保存的(安静やスポーツ制限など)に治療しますが、裂離部骨片が骨盤から大きくずれている時には、スクリューなどで固定する必要かあります。完全復帰には、8〜12週間かかります。

 

下前腸骨棘裂離骨折 かぜんちょうこつきょく(図2)
 この部位には大腿直筋(膝を伸ばす筋肉)が付いておりサッカーなどでボールをキックした時に発生します。復帰には、6〜12週かかります。

 

坐骨結節裂離骨折 ざこつけっせつ
 この部位には大腿二頭筋などの大腿部の後ろ筋肉が付着しており疾走、ジャンプや走り幅跳びなどで発生します。多くは保存的に治療しますが偽関節(骨折部がつかないこと)になることが多く3〜6カ月経過観察が必要です。

 

いずれにしても正確な診断が遅れるとスポーツ復帰までに余分な時間がかかったり、筋力低下をまねきます。また二回目の受傷でトドメをさす事もありますので、レントゲン検査をして正確な診断を受けて下さい。

(図2)下前腸骨棘裂離骨折(14歳・男 サッカーのボールキック時に受傷)